(画像引用元:東映アニメーション HUGっと!プリキュア)
※以前noteに投稿していた内容を再構成してまとめています
各地でそんな自己紹介をしてきたので「なんでプリキュア?」と大体訊かれます。
表立って引かれたこともないし、訊かれることも構わないのですが、なぜ好きなのか、思い出しながら書き綴ってみることにします。
遡ること2004年。初代「ふたりはプリキュア」放映当時の私は8歳でした。
「おジャ魔女どれみ」世代だった私は、画面の向こうで戦っている女の子たちがかっこよくて、特撮ヒーローのように憧れを抱いていました。
親の実家に帰省したときも気が付くとチャンネルを回していて、でも女の子向けアニメという認識はあったから、祖父母や両親が近くに来るとテレビを背に狼狽してました。恥ずかしかったんですね。
多くの子どもたちがそうだったように、その後は自然にプリキュアを「卒業」していきました。
時が経って高校生になると、当時放送されていた「スマイルプリキュア!」や「ドキドキ!プリキュア」を毎週欠かさず観るようになります。決定的なきっかけは覚えてませんが、10年前同様に何かが心を惹きつけたんでしょう。
中学生時代にほとんど不登校だった私にとって、久しぶりの学校生活は刺激の連続、心のキャパシティは決壊してばかり。
休日に観ていたプリキュアは、不安定だった心のビタミン剤になってくれたんだと思います。
学生生活終盤にかけては彼女たちのふとした言葉に救われて本気で泣くこともあり、プリキュアはそんな私さえそっと受け入れてくれました。本当に優しくてかっこいい、憧れのヒーロー(ヒロイン)でした。
やっぱりこのときもきまりが悪くて両親の前では観られませんでしたが、もしこの再会がなかったら今の私はどうなっていたんだろうと本気で思います。
もっとこの世界を知りたい、プリキュアと一緒に歩いていきたい。この頃から強く考えるようになりました。
プリキュアをリスペクトする理由は、何よりもまっすぐで飾らないテーマ性です。シリーズ全体に脈打つ友達、愛、自立、家族、幸せ、夢、多様性といった文字通りストレートなメッセージです。
敵対する組織だけでなく、味方であるプリキュア同士、家族や友達といった大切な人々、子どもと大人の間で揺れ動く自分自身との対話を通じて、彼女たちは様々な問いに答えを出していきます。
分かりやすい勧善懲悪一本道ではなく、時に敵となる存在に手を差し伸べ、時に傍らの仲間と袂を分かちながら、彼女たちは未来へと進んでいきます。
その道筋に私は昔の自分を想起し、今の自分を重ね合わせていました。
何でも難しく考えて必要以上にストレスが折り重なる現実社会の自分を離れ、素直な心でプリキュアを応援したり感情移入して笑ったり泣いたりできるのがニチアサでした。
子ども向けだからってバカになんかできません。若い子向けだからいいんです。
仮面ライダーやウルトラマン、戦隊ヒーローに今でも心躍らせるかつての少年少女がいるように、プリキュアに憧れて前に進んできたかつての少年少女はたくさんいるはずです。
私の中にも「プリキュア、がんばれーっ!」と叫びながら目を輝かせている女の子がいます。異論は認めます。
数ある作品の中でも一番印象的だった言葉があります。
大学卒業の節目だった2018~19年放映の「HUGっと!プリキュア」はとても話題になったのですが、それは主人公のキュアエール(野乃はな)が放った、福音のような言葉でした。
「いいんだよ! 男の子だってお姫様になれる!」
胸がじーんと熱くなって、本当に嬉しかったことが忘れられません。
当時は自分の中の性別の枠組みと価値観が揺らいでいた時期で、自分は男なのか女なのか、そもそも二分論で語れるような概念なのか、ずっと思い悩んでいました。
男である(と思っている)自分が若い女の子向け(とされる)アニメに夢中になっていていいものか、そんなことばかり考えていました。
そんな自分に深く刻まれたのが、キュアエールのまっすぐなメッセージです。
同じく、作中で飛び出した「女の子だってヒーローになれる!」という言葉に勇気をもらった女性も少なからずいたことでしょう。
好きになるもの、憧れるもの。それに子どもも大人も、男の子も女の子も関係ない。だから、自由な自分でいたらいいんだよ。彼女たち(彼ら)はそう言ってくれた気がします。
「なんでもなれる! なんでもできる! 輝く未来を抱きしめて!」というキャッチコピーと共に、今でも私の中で脈動する大事な言葉、大好きな言葉です。
プリキュアを好きだった人たち、今でもプリキュアを好きな人たち、世の中にはどちらもいることでしょう。
その少年少女が青年になっても、子を持つ親になっても、いつでもいつまでも心の中にはプリキュアがいてくれると信じています。
周囲に娯楽のない宿坊で働いていた頃も、その物語に毎週立ち会えることが文字通り心の支えでした。
これだけたくさん支えてもらっているのだから、少しのことで負けてらんない。そう思って明日を迎えた日は数知れません。
社会を離れ、世間のレールを外れた今はなかなか視聴できていませんが、それでもずっと、そんな自分でも、私の中にはプリキュアが息づいています。
プリキュアについて夜通し語らえるような友人とも出会いました。
グッズを持ち歩いたり、親子に混ざって映画を観に行ったりするのには勇気がいりますが、彼女たちが「いいんだよ!」と迎えてくれるなら向かうところ敵なしです。
なので私も、照れますが胸を張って言いたいです。
━━私、プリキュアが大好きなんです!